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サザエさんに思う

昨日、久々に「サザエさん」を見ていて驚いた。

その話とは、波平が十数年前に伺ったことのある知人宅に
向かう途中、街の様子が当時とがらりと変わってしまっており、
住所のメモも忘れていたために道に迷ってしまう。

それを知ったカツオが(級友で不動産屋の娘である)
花沢さんとともに駆けつけ、花沢さんが用意周到に
用意していた当時の地図のおかげで無事到着する。

そして、この二人は、波平からそのお礼として、
帰りにお寿司を御馳走してもらう約束を取り付ける。

まあ、ここまでは、カツオの作戦通りといった観だが、
この話はここからが本筋だ。

その3人で立ち寄ったお寿司屋のご主人というのが、
十数年前の職人修行時に、親方に怒鳴られて、
修行を辞めてしまおうかと、道端で泣いていたところ、
波平に声を掛けられたことを覚えていると言うのだ。

なんでも、当時の波平は、「怒鳴られるというのは、見込みが
あるからじゃよ。」などと、たまたま道で出くわした見ず知らずの
若者にハンカチを差し出すと、「これで甘いものでも買いなさい。」
と、千円札まで差し出したのだそうだ。

今や、寿司屋の主人になった当時の若者は、今の自分があるのは、
あの時、優しい言葉を掛けてくれた波平のおかげだとして、
お礼に一献御馳走したいと言い出す。

昼間からしたたかに酔っぱらい、カツオと花沢さんに担がれて、
磯野家に到着した波平は、そのまま床に入ってしまうが、
カツオ談によれば、波平は、嬉しそうに酒を馳走になり、
帰りの電車内で歌を歌ったりして、かなり上機嫌だったとのこと。

その後、波平のいない夕飯のシーンでは、皆が口々に
波平がいかに嬉しかったか、いかに楽しかったか、と
家族中が波平の心中を思い、自分のことのように
誇らし気に話し出す。

マスオも嬉しくなり、皆で乾杯しようと提案し、
サザエに嗜められながら一献つけてもらう。
というシーンで終了。

びっくりである。

説明不要だが、この番組は、日本人なら誰もが知る長寿番組だ。
日曜日の夕飯を家族で囲む時間枠をもう数十年、確保し続けている。
その長寿たる所以が、この話のなかで、改めてわかった気がした。

調べてみると、サザエさんは、時代背景が曖昧との批判があるようだ。
視聴率も昔ほどではないらしい。しかし、日本の古き良き時代の
アイデンティティを面白おかしく伝える番組と割り切れば、
むしろ非常に貴重な作品であるといえる。

この作品は、いわば現代の「落語」のようなものだと思う。

いつの間にか時が過ぎてしまい、私自身が、カツオ目線から、
波平視点に近くなり、話の筋を眺めていくに、現代の東京で、
このようなことが起こるとは到底思えない。

しかし、どこかで起こってほしい、どこかにきっとあるはずだ。
そんな祈りに似た感情を持ちながら、終わりの歌を聞いていた。

広い空を眺めたら♪ 大きな雲が飛んでいた♪

このストレートど真ん中の圧倒的な平和

突然、愚息が声を出して笑った。
見ると、終わりの歌にある四コマ漫画風のコントだった。

確実に、かつ着実に、
我々の家族感や幸福感の醸成に、サザエさんが一役も二役もかっている。

あれから数十年、私は幸せになれたろうか?
私の息子もいつかこんな風に家族と夕飯を囲むだろうか?

なぜか、私が子供の頃の食卓を思い出すと、
まだ健在だった祖父や祖母の笑顔がこぼれた。

現代に、サザエさんの潔白な世界を求めるは無理であろう。
しかし、皆の心にはある。それでいいと思う。

サザエさんは、現代の古典落語である。

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